2007年02月28日

異訪のひと

 たとえば。
 遠い土地に旅に出たとする。
 古い、文化遺産の建物を訪ねるとしたら、そういうものはたいてい土地に根付いて
いるから、年季の入った民家の間をすり抜けることもあるだろう。
 そういう時に、今はほとんど失われてしまった雑多な商店を見つけることがある。
 雑貨店というべきか百貨店というべきか、生活に必要なものをなんでも置いてある
小さな店だ。
 埃をかぶった洗剤の箱、作業用の無骨な手袋、強いゴムの匂いのする風船。
 褪せてくすんだそれらの色にひかれて足を踏み入れたくなるけれど、できないんだ。
 その土地に、町並みに溶け込んだ店構えであればあるほど、入って行くことができ
ない。
 入った瞬間の、自分自身の違和感が悲しいんだ。
 置き忘れられた調和を、ふっつりと途切れさせる不調法なものにしかなれない自分
の身が、悲しく恥ずかしい。

 ほんの少し仲間に入りたいだけなのにね。
posted by ぺこ at 23:35| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月15日

きみのかなしみは

 月明かりに映える白い横顔の、熟れた唇が開かれる。
「たとえば、今日を最後に二度と逢えなくなるとしても」
「サヨは」
 先の言葉を断ち切るように遮った。サヨは唇を閉じる。
「どうしていつも失くすことばかり考えるの」
 サヨの白い顔が、くるりとこちらを向いた。か細い明かりの下で、ひどく驚いた表情が見てとれた。
「そんなの」
 自明の理(ことわり)とばかりに、サヨは迷いなく答えた。
「悲しい思いをしたくないからだよ」
 まるで僕の気持ちなど、少しも察してはくれないサヨ。

 誰でも悲しい思いなんかしたくないね。
 でも、サヨ。僕は。

 永遠を望めるほど幼くもないけれど、それを諦められるほどまだ達観できてもいないんだよ。



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posted by ぺこ at 23:06| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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