2007年03月21日

夜間飛行

 君はふらりととこかへ出かけては、おみやげを両手に下げて戻ってくる。
 しばらく見かけないなと思っていると、遠い北の土地のおみやげを持ってふらりと現れた。
「星を見ようと思って」
 私の部屋のお風呂を使い、暖まって少し眠そうな君は、ベランダで持参したワインを舐めて夢心地だ。
 お酒の呑めない私は、おみやげにくれたチョコレートをつまみながら君の話を聞く。
 遠い北の星空の感動を語る君。
「あんなにたくさん見えたのに、ここじゃひとつも見えないね」
 都市の夜空は今日は曇りで、地上の電光のおかげで雲の形さえくっきり見える。
 君の好きなかそけき星の光は、邪魔ものが多すぎてここでは君まで届かない。
 もう一度見に行こうかな、と北へ思いを馳せる君の瞳が癪で、そうでもないよ、と私は言った。
「ほら、光ってる」
 驚く君に示して見せた人差し指の先には、明滅する赤い光。
 夜間飛行の飛行機の光だ。
「あっちにも」
 今度は緑色と黄金色の光が交互に点滅している。
「星は見えなくっても、空飛ぶ光は見えるよ。ちょっと見上げた時に飛行機の光が見えると、私は妙に嬉しくなる」
 人のつくった夜空を切り開く光。傲慢で、けれど必死なその光を私は気に入っている。
 都市の夜空も捨てたもんじゃないと思うんだけど、とちらりと傍らを見れば、君は肩を震わせて笑っていた。
「笑わないでよ」
「ごめんごめん。でも、その見方はちょっと良いね。そうだね、星はなくても光は見えるね」
 君は上機嫌でワインを一口呑み、まあしばらくはどこにも行かないからさ、と言った。
 遠くにばかり焦がれる君を、引き止めたかった私の気持ちなどお見通しということか。
 でもひとつだけ、君のいない夜に見る夜間飛行の光には、君が乗っているのかなと考えてしまうことだけは、教えてあげないことにした。



-----------------
sent from W-ZERO3
posted by ぺこ at 07:57| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月20日

no-title


−−RRRRR…

「もしもし」
『わっ、出た』
「………………」
『わーごめん! 切るな! 切らないで!』
「自分でかけといて『出た』はないでしょ」
『そうです、ごめん。失礼しました。もしかしてダミーの番号つかまされたかなとか思って、つい』
「ダミー? 私がそんなせこい真似すると思ってんの」
『そんなこと思ってるわけじゃないんだけど、やっぱ不安があるじゃん? でも良かった、つながって』
「…………」
『…………』
「……なんで無言なの。なんか言うことあるんじゃないの?」
『あー、うん。ええと……こないだ、楽しかったね』
「べつに」
『何それ!』
「ねえ、わざわざそんなこと言うためにかけてきたわけ?」
『違うよ! そうじゃなくて……』
「そうじゃなくて?」
『だからさ………………』
「……だからなんでそこで黙るの! 鬱陶しい!」
『ひど!』
「明日の夜8時、この前のお店ね!」
『……は?』
「言っとくけど1分でも遅れたら私は帰るからね、じゃ」
『え、嘘、ちょっと待っ……』

−−−−−−−−…………

 押しの弱さを可愛いと思うだなんて、絶対に言ってやらない。


-----------------
sent from W-ZERO3
posted by ぺこ at 18:28| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。