2007年04月01日

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 生涯を終えるまでに
 あなたの不在に慣れることができるのだろうか。


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posted by ぺこ at 07:45| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月21日

夜間飛行

 君はふらりととこかへ出かけては、おみやげを両手に下げて戻ってくる。
 しばらく見かけないなと思っていると、遠い北の土地のおみやげを持ってふらりと現れた。
「星を見ようと思って」
 私の部屋のお風呂を使い、暖まって少し眠そうな君は、ベランダで持参したワインを舐めて夢心地だ。
 お酒の呑めない私は、おみやげにくれたチョコレートをつまみながら君の話を聞く。
 遠い北の星空の感動を語る君。
「あんなにたくさん見えたのに、ここじゃひとつも見えないね」
 都市の夜空は今日は曇りで、地上の電光のおかげで雲の形さえくっきり見える。
 君の好きなかそけき星の光は、邪魔ものが多すぎてここでは君まで届かない。
 もう一度見に行こうかな、と北へ思いを馳せる君の瞳が癪で、そうでもないよ、と私は言った。
「ほら、光ってる」
 驚く君に示して見せた人差し指の先には、明滅する赤い光。
 夜間飛行の飛行機の光だ。
「あっちにも」
 今度は緑色と黄金色の光が交互に点滅している。
「星は見えなくっても、空飛ぶ光は見えるよ。ちょっと見上げた時に飛行機の光が見えると、私は妙に嬉しくなる」
 人のつくった夜空を切り開く光。傲慢で、けれど必死なその光を私は気に入っている。
 都市の夜空も捨てたもんじゃないと思うんだけど、とちらりと傍らを見れば、君は肩を震わせて笑っていた。
「笑わないでよ」
「ごめんごめん。でも、その見方はちょっと良いね。そうだね、星はなくても光は見えるね」
 君は上機嫌でワインを一口呑み、まあしばらくはどこにも行かないからさ、と言った。
 遠くにばかり焦がれる君を、引き止めたかった私の気持ちなどお見通しということか。
 でもひとつだけ、君のいない夜に見る夜間飛行の光には、君が乗っているのかなと考えてしまうことだけは、教えてあげないことにした。



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posted by ぺこ at 07:57| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月20日

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−−RRRRR…

「もしもし」
『わっ、出た』
「………………」
『わーごめん! 切るな! 切らないで!』
「自分でかけといて『出た』はないでしょ」
『そうです、ごめん。失礼しました。もしかしてダミーの番号つかまされたかなとか思って、つい』
「ダミー? 私がそんなせこい真似すると思ってんの」
『そんなこと思ってるわけじゃないんだけど、やっぱ不安があるじゃん? でも良かった、つながって』
「…………」
『…………』
「……なんで無言なの。なんか言うことあるんじゃないの?」
『あー、うん。ええと……こないだ、楽しかったね』
「べつに」
『何それ!』
「ねえ、わざわざそんなこと言うためにかけてきたわけ?」
『違うよ! そうじゃなくて……』
「そうじゃなくて?」
『だからさ………………』
「……だからなんでそこで黙るの! 鬱陶しい!」
『ひど!』
「明日の夜8時、この前のお店ね!」
『……は?』
「言っとくけど1分でも遅れたら私は帰るからね、じゃ」
『え、嘘、ちょっと待っ……』

−−−−−−−−…………

 押しの弱さを可愛いと思うだなんて、絶対に言ってやらない。


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posted by ぺこ at 18:28| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月28日

異訪のひと

 たとえば。
 遠い土地に旅に出たとする。
 古い、文化遺産の建物を訪ねるとしたら、そういうものはたいてい土地に根付いて
いるから、年季の入った民家の間をすり抜けることもあるだろう。
 そういう時に、今はほとんど失われてしまった雑多な商店を見つけることがある。
 雑貨店というべきか百貨店というべきか、生活に必要なものをなんでも置いてある
小さな店だ。
 埃をかぶった洗剤の箱、作業用の無骨な手袋、強いゴムの匂いのする風船。
 褪せてくすんだそれらの色にひかれて足を踏み入れたくなるけれど、できないんだ。
 その土地に、町並みに溶け込んだ店構えであればあるほど、入って行くことができ
ない。
 入った瞬間の、自分自身の違和感が悲しいんだ。
 置き忘れられた調和を、ふっつりと途切れさせる不調法なものにしかなれない自分
の身が、悲しく恥ずかしい。

 ほんの少し仲間に入りたいだけなのにね。
posted by ぺこ at 23:35| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月15日

きみのかなしみは

 月明かりに映える白い横顔の、熟れた唇が開かれる。
「たとえば、今日を最後に二度と逢えなくなるとしても」
「サヨは」
 先の言葉を断ち切るように遮った。サヨは唇を閉じる。
「どうしていつも失くすことばかり考えるの」
 サヨの白い顔が、くるりとこちらを向いた。か細い明かりの下で、ひどく驚いた表情が見てとれた。
「そんなの」
 自明の理(ことわり)とばかりに、サヨは迷いなく答えた。
「悲しい思いをしたくないからだよ」
 まるで僕の気持ちなど、少しも察してはくれないサヨ。

 誰でも悲しい思いなんかしたくないね。
 でも、サヨ。僕は。

 永遠を望めるほど幼くもないけれど、それを諦められるほどまだ達観できてもいないんだよ。



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posted by ぺこ at 23:06| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月20日

少年よ、恋を抱け

 残暑も終わりきらない九月にマラソン大会だなんて、どうもうちの学校はおかしいとしか思えない。
 マラソン大会があるってことは、大会前の体育の時間が練習にあてられるってこと。
 しかも大会を来週に控えた今日なんかは、実地練習と称して町内のコースを走らされるのだ。九月の半ば、まだまだ暑い。熱中症で倒れたらどうしてくれる。
 もともと長距離が苦手な俺は、校門が見えなくなると早々に足を止めて歩き出した。体育の時間が終わるまでに学校に戻れば問題ないんだ。真面目に走っているのは運動部の部員ばかりで、それ以外のクラスメイトはみんな俺と似たり寄ったりだ。
「あー! 山崎見っけ!」
 背後から聞こえた慣れた声に振り向いた。案の定、吉田がニヤニヤ笑いながら走りよってくる。
「なんだよ、女子も実地練習か」
「うん。本番来週だからねえ」
「お前歩いてないで走れよな、陸上部」
「女子コースに入ったら走るよ。全部なんて走ってらんないよ、あたし短距離なんだから」
 校門を出てしばらくは同じコースを走るが、途中で男女のコースは分かれる。男子コースは5kmあり、女子コースは3kmだ。ずるい。
「陸上部は全員男子コースじゃねえのかよ」
「長距離担当はね。さっちんとか。あたしは関係なし」
「俺も女子コースがいいなあ……」
 ぼやきながらちらっと隣を歩く吉田を盗み見た。夏休みが明けてからなんとなく思っていたことだが、こうしてあらためて隣に立ってみると如実にわかる。
「……なあ。吉田、背のびた?」
「あ、やっぱわかる? なんかねえ、夏休み中に3センチのびたのね」
「で、今何センチあんの?」
「158」
 先週の保健室掃除当番の時にふざけて計った俺の身長は162cmだ。まだ吉田とは4cmの差がある。俺だって成長期だ。またすぐに吉田を引き離すと思いたい。が、実のところ夏休み前から0.5cmしかのびていないという事実がある。
「あ、あれ? なんか冷たくない?」
「え?」
「うわっ、やだ雨だよ! 降ってきた!」
 そういえば昨日見た天気予報では、今日は曇り時々雨だった。40%という微妙な降水確率で、体育が始まる前に降ってくれと願っていたのに降らず、がっかりしていたことを思い出す。
 それが町内コースに出た途端に降り出すとは、なんて間が悪いのか。しかも雨足がどんどん強まってくる。40%の確率とは思えない。学校へ戻るにも距離がある。
「あ、吉田、こっち」
 数メートル先にバス停と屋根のある待合い所を見つけ、吉田を手招きして走った。
「ちょっと雨宿りしよう。そのうち先生が傘持って探しに来るだろ」
「うん。あー、結構濡れちゃったなあ。山崎、タオルとか持ってる? なかったらあたしのハンカチ貸すけど」
「ああ、借り……」
 借りたい、という言葉が思わず止まった。しまった、と思う。
 吉田と並んだ時に気になったのは、実は身長だけじゃない。例えば、久々に近い距離で見る薄いTシャツの肩だとか、髪を束ねてあらわになった首だとか。……胸、だとか。
 そういう気になるポイントが、雨に濡れたせいでいちいち強調されている。
「はい」
「あ、うん。サンキュ」
 差し出されたハンカチをできるだけ自然に受け取った。髪の雨粒を拭いたハンカチからは、シャンプーの香りがしてぎくっとする。体にひっつくTシャツを、気持ち悪そうにつまむ吉田をなるべく見ないようにしながら、ハンカチで少しだけ腕を拭いた。
「お、いたいた! 吉田と山崎!」
 ビニール傘を何本も抱えた体育教師が走りよってくるのが見え、俺は心底ほっとした。
「悪かったなあ。こんなに降るとは思わなくてな。傘貸すから学校戻って着替えなさい。残りは自習、傘は職員玄関の傘立てに返しておいてくれ」
「はーい。あれ、先生1本だけ?」
「他のやつらにも渡さなきゃいけないからな。2人なら1本で充分だろ。風邪ひかないように、早く戻って着替えろよ」
 じゃあな、と先生は慌ただしく駆けだして行く。残された吉田はともかくとして、俺の内心は冗談じゃなかった。
 吉田と相合い傘?
 雨に濡れた状態の吉田と至近距離?
「しょうがないっか。じゃあ山崎」
「俺! 先に戻るから!」
「はい?」
「ハンカチ、洗濯して返すな! じゃ!」
 何言ってるんだという顔の吉田を残し、俺は待合い所を飛び出した。ちょっと山崎、と大声で呼ぶ吉田の声も聞こえないフリで全速力。
 短距離走者の吉田も追いつけないスピードで、俺は学校へと戻るのだった。


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posted by ぺこ at 18:41| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月16日

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 時折
 世界の広さに立ちすくむ


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posted by ぺこ at 12:49| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月09日

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 怖いか、と問われたので頷いた。
 指先の震えは止まらない。じわじわと固まる胸元が苦しく、不規則な呼吸を繰り返す。
 背中をなでる暖かい手のひらも、この息苦しさを取り除いてはくれない。
 そんなに怯えなくとも誰もおまえを攻撃しはしないよ。優しい言葉もこの震えを止めてはくれない。

 誰もわたしを蔑まないかもしれない。
 誰もわたしを責めたてないかもしれない。
 わたしは世界の優しさを知っている。
 だけど、何ものもわたしを傷つけない保証などないのだ。
 世界の優しさに手を触れようとしたとき、それがひっくり返って棘に変わらないとも限らない。

 わたしは優しさを与えられるに足る者であるのか。
 共存を許される者であるのか。
 わたしの白旗は人々に正しく伝えられるのかどうか。



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posted by ぺこ at 14:33| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月21日

てのひらのお獅子

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 なあに? なんだよう
 起こすなよう
 クリスマスみたいな色だって?
 冗談じゃない よく見なよ
 小さくてもぼくはお獅子だ
 まだ出番の時期じゃないんだよ
 お正月まで起こさないでよ
posted by ぺこ at 01:44| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月16日

NO START

 わたしたちは始まりを恐れる。
 始めることを恐れる。
 踏み出してしまえば、後戻りは許されない。
 だから。
 わたしたちは終わりを望むのだ。
 わたしたちは何も始めないまま、終わることを願う。


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posted by ぺこ at 19:29| メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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